11.右手の記号 12.アポヤンドとアルアイレ 13.ギター譜の特徴 14.リピート記号 15.指の訓練3
16.音符の不思議2 17.アルペジオ(1) 18.左小指(1) 19.左小指(2) 20.音階表

11.右指の記号について
 ギターのふるさとは「スペイン」じゃ。だからギター譜にでてくる右指の記号はスペイン語の頭文字「p、i、m、a、ch」を使うわけじゃが、今日はそれらの言葉をちょっと確認しておこうと思うんじゃ。

 親指はpulgar(プルガール)、この言葉は本来ぶどうの木の剪定のときに残しておく「親芽」を指す言葉じゃ。親指を見たら「ぶどうの親芽」を想像したまえ。ちなみに英語ではthumbじゃから、フォーク・ギターなどは親指を“T”と書いているものが多いんじゃ。

 次に人差し指のíndice(インディセ)、これは“指し示す”の意味があり、日本語の“人差し指”と同じようなニュアンスじゃ。よく目次などに「index」と書いてあるのをご存知と思うが、その意味じゃな。英語ではindex fingerじゃ。

 次に中指のmedio(メディオ)、これは中間・半分と言う意味で、ステーキ屋さんに行って「ミディアムで焼いてください」という言葉と同義語じゃ。英語だとmiddle finger。中指は真中の指じゃからな。

 薬指はanular(アニュラール)
、これは“指輪の”と言う意味。英語はring finger。指輪をはめる指じゃからな、薬指は。

 そして、ギター譜ではほとんど登場しないが、小指はchico(チコ)、日本語と同様“ちっこい、小さい・幼い”と言う意味じゃ。スペインの教則本によっては小指をmeñiqueの略で「ñ」と書いているのもある。英語だとlittle fingerじゃな。記号というのは漠然と覚えるのではなく、その意味を知ることでずっと親しみやすくなるんじゃ。

 かの有名な歴史作家、司馬遼太郎はすべての名前に意味を知りたかった。英語の授業で「先生、ニューヨークの意味はなんですか?」と聞いて、授業を妨害されたと感じた先生がかんかんに怒り、以来司馬遼太郎はなんでも自分で調べることにした、という有名な話がある。君も疑問を感じたら何でも調べる、という習慣をつけてはどうかな?いろいろ見えてきて、楽しいもんじゃ!

12.アポヤンドとアルアイレ
 ギターの奏法に「アポヤンド奏法」と「アルアイレ奏法」があるのはみなよくご存知と思うが、初心者・ギターを弾いていない方のためにもう一度おさらいしておこう。

 前項とおなじく、これらはスペイン語で「apoyando」「al aire」と書く。apoyandoはapoyar(アポヤール、もたれかかる)という動詞からくる言葉で、弦を弾いた指がとなりの弦に止まる奏法じゃな。たとえばi(人差し指)が1弦を弾いたら、弾き終わった指はそのままの勢いで2弦に止まる。p(親指)のアポヤンド奏法は、6弦を弾いた場合には5弦に止まるということになる。

 対してal aireはaire=air(空気・空中)じゃから、「弦を弾いた指は空中へ」という意味じゃな。「弦をはじく」といえばアルアイレ奏法のことを指すわけじゃ。ちなみにスペインでは「アルアイレ」とは発音せず「アライレ」という。

 なぜ弾き方に種類があるかといえば、「音色」「音量」が違っているからなんじゃ。すなわち、弦に与える振動のかけ方が違う、ということ。アポヤンドは弦が円運動をなすように振動させ、アルアイレは弦が直線運動をなすように振動させる。初心の頃は「メロディはアポヤンド、伴奏はアルアイレを使いなさい」と教わるものじゃが、どちらも一長一短があり、うまく使い分ける必要があるんじゃ。更に「アポヤンドの音のようなアルアイレ」や「アルアイレの音のようなアポヤンド」も訓練である程度可能になる。大切なのは“自分の描いた音が出せるかどうか”ということじゃ。「奏法」というのは目的ではなく「手段」ということを忘れずにな!

13.ギター譜の特徴
 音楽を楽譜上で完璧に示すということはできない。特にギター譜の場合は、五線一段で書かれるわけじゃから、かなりの無理があるんじゃ。音を出すタイミング(リズム)は書いたとしても、その音の余韻(サスティン)がどこまで伸びるかということに関しては注意深く書かれていないことが多いんじゃ。譜例1を見ていただきたい。カルリ[1770-1842]作曲の有名な練習曲「アンダンテ」の冒頭部分じゃ。

 懐かしく思い出される人も多いと思うが、初級者は必ずといっていいほど練習する作品じゃな。この曲のメロディは8分音符でかかれているが、実際には次のように解釈して演奏したはずじゃ。

 では何故カルリさんは上のように楽譜を書かなかったのじゃろうか。答えは簡単、「初心者にはリズムが見づらい」ということじゃな。そして譜例1にように書いても譜例2のように響くんじゃなあ、ギターは…。これがギター譜の特徴といえる。つまり、ギター譜は楽器の構造上自動的にそうなる場合の余韻をあまりていねいには書いてないんじゃ。

 時代が移り、F.ソル[1778-1839]の作品はかなり正確な書き方をしておる。が、それでもやはり演奏者の判断にゆだねるという部分はどうしても残る。このような問題は、ピアノ譜に於いてもあるんじゃが、結局は「音符をよく読む」ということは「楽譜」というものは不完全である、ということを知ってほしいからなんじゃ。分かったかね?

14.リピート記号は繰り返してはならない!?
 楽譜を簡略にするために先人たちは様々な省略記号を考えた。そもそも紙は貴重品であり、今日のようにティッシュ・ペーパーやトイレット・ペーパーのような使い捨ての紙などあるはずもなく、1枚の紙を大切にし、節約できるものは節約したという時代じゃ。楽譜上でも同じ個所の演奏は「省略記号」を使うというのは人類の知恵ともいえる。その中で最も多く使われるのが「リピート記号」じゃ。

 ご存知のようにリピート記号で閉じられた小節は2回演奏する、ということじゃな。省略記号としてはもっとも初期からあったと思われる。次に覚えていただきたいのはD.C.(ダ・カーポ)やD.S.(ダル・セーニョ)などのイタリア語じゃな。da は「〜から」で、Capoは「頭・頭部」という意味。Segnoは英語のsign(サイン)じゃ。これらの言葉はよく al Fine(アル・フィーネ)と一緒に D.C. al Fine とか D.S. al Fine と書かれる。最初に戻ってFineまで、セーニョに戻ってFineまで、の意味じゃね。そして to Coda はコーダ記号からコーダ記号に飛べばよい。イタリア語の指示のあと英語の指示、というのは楽譜の歴史的必然ということじゃな。それでは次の楽譜の演奏順序をいえるかね?

AやBなどは数小節あるものと考えよう。Aの部分は頭にリピート記号を書いていないが、Aは2回演奏する。通常「頭」の繰り返し記号は省略されることになっている。その後、BB CC DDと演奏して、ダ・カーポで頭に戻り、ABでおしまいじゃ。え?AA BBじゃないかって?そこが違うんじゃよ。D.C.やD.S.して戻った時は繰り返し記号は通常無視するんじゃ。この慣例は独習者がよくカン違いする。気をつけておこう。では次の例はどうかな?

これは歌の楽譜などによく出てくるケースじゃ。Aはイントロ部分と思えばよい。
正解は、ABCD BCE CF となる。カッコ1は1回目の演奏、カッコ2はカッコ1を飛ばしてカッコ2を演奏する、という意味じゃな。カッコ2のおしまいにD.S. al Codaがでてくる。セーニョに行ってコーダからコーダに飛ぶ。セーニョという記号は頭文字Sをデザインしたもんじゃな。ぜひ正しい演奏順序を覚えてくれたまえ!

15.指の訓練(3)
前ページので示した指の訓練は続けておるかね?今回は更に指に有益な訓練をご紹介しよう。指の筋を鍛えるには、「指を外に出す練習」がもっとも効果が出るんじゃ。話を簡略にするために、図を元に話をしよう。

1.基本形→ 2.小指→ 3.薬指→ 4.中指→ 5.人差し指

1.では右手親指が他のすべての指の爪にかぶさっている。親指の爪は小指の爪にしっかりと接触する、これが基本形じゃ。そして、2・3・4・5と小指から順に指が開いていく。このとき親指の「つっかえ」から指が外れて“パチン”と勢いよく開く感じにしよう。実際に耳を澄ませば「パチン」と聞こえるはずじゃ。次の図は指順がこの反対の練習じゃ。同じ要領でやってみよう。

1.基本形→ 2.人差し指→ 3.中指→ 4.薬指→ 5.小指

これらの練習で気を付けてほしいのは「親指が動かないこと」じゃ。はじめはゆっくりでも構わないが、慣れてきたらスピードを出してやってみよう。基本形(1)から最終形(5)までを何度も連続で行うわけじゃが、1秒で2回くらいできるようになれば、かなり発達したはずじゃ。更にこれらの練習は、左指においても効果がでる。両指を同時に動かすとよりよい効果を期待できるんじゃ。練習して少しでも痛みを感じたらしばらく指を休めた方がよいが、まずは大丈夫と思う。指の弱い人はぜひやってほしい訓練なんじゃ。

16.音符の不思議(2)
「塾長、音符には名前がありますよね」
「そうじゃな、休符も同様についておる」
「四分音符の長さは普通1なのに、どうして1音符と言わないのかなあ、分かりやすくていいのに」
「ははあ、君は音符や休符の名前がなぜそう呼ばれるかを気づいてないなあ?」
「名前の由来ですかア?」
「そうじゃよ、音符というのは絶対的な長さを持っていないんじゃ。四分音符の長さが1というのは、4分の何拍子という拍子記号の時だけじゃからな。8分の○拍子、2分の○拍子では1という基本の単位がそれぞれ8分音符・2分音符に変わるからじゃよ」
「でも割と少ないんじゃないのですか?そういう曲は」
「比率的にはそうかも知れんがな…。しかしもっと大切なことがある。音符・休符のおおもとは“全音符・全休符”を基本に考えているということじゃ。全音符の何分の1の長さであるかという相対的な長さが音符の名前に繋がっているんじゃ。四分音符だと全音符の4分の1という長さを示している。他の音符の名前も同様じゃな」
「なるほど!」
「音符の形をよーく見てごらん。全音符だけ“たま”の向きが違うんじゃ。普通は右肩上りなのに、全音符は左肩があがっているんじゃよ」
「ほんとだ!」
「これは全音符が基本の音符であることを意味しているんじゃ。それと、全休符は特別な使い方があるので注意しよう。曲の拍子記号に関係なく“1小節休み”という場合にも使われるんじゃよ。」
「よくわかりました」

17.アルペジオ(1)
ギター作品にアルペジオは欠かせないものじゃ。だからアルペジオをいかに美しく、レガートに演奏するかというのはとても重要なテーマじゃ。そもそもアルペジオは arpeggio と書き、スペルの頭に“h”を加えれば“harpeggio”となる。すなわち“ハープのごとく”じゃな。日本語だと“分散和音”といわれている。アルペジオの基本は「全部の音が鳴り響くこと」じゃ。このページの13項で述べたように、アルペジオの余韻(サスティン)は楽譜上あまりていねいには書かれない。たとえば譜例1のような場合は譜例2のように4つの声部A、B、C、Dが重なって響く。

これらをまとめると譜例3の左のように非常に見づらい譜面になってしまうんじゃ。

従って一般的には右のように低音の声部を独立させ、それ以外の音はサスティンをあまり気にせずに書いてゆく。また、上声部にメロディが組み込まれる場合なども独立した声部として書き表される。しかし、必要があればすべての音のサスティンを書き表すこともある。いずれにせよアルペジオというのは、たとえほんの数箇所出てくる場合でも、「すべての音が鳴り響くように演奏する」ということがもっとも大切なことなんじゃ。アルペジオがでてくるたびに右指を弦にセットし、余韻を消していることに気づかないこともあるから、ぜひ注意してくれたまえ!

18.左小指を鍛えよう!(1)
 左手は人差し指から小指へ順に1・2・3・4という記号が付いているのはよくご存知のことと思うが、指というのは元々均等な強さ・柔らかさを持っているわけではないのに、ギターではこれら4本の指はほとんど均等な動きを強いられるもんじゃ。とりわけ4指(小指)は生まれながらにして弱い指であるにもかかわらず、ギターにおいてはきわめて活発な働きをする指じゃな。

 従ってギターを初めて持った入門期から4指を使うべきと私は考える。たとえば、1弦3フレットの「ソ」や2弦3フレットの「レ」を大概の入門書では3指(薬指)を使うように指示しているんじゃが、私は4指を勧めているんじゃ。この理由は4指を鍛える、という理由だけではなく、「フレットに対する左指の平衡感覚を養う」という意味もある。3指だと左手の重心が偏りやすいんじゃ。また、Dm・G・C7などのコードフォームではそれらのポジションは4指を使うのが普通じゃな。さらにローポジションの楽曲においても「ソ」や「レ」が4指を使用する例は枚挙に暇(いとま)がないほどじゃ。

 しかし、低音の4・5・6弦では3フレットを3指で使うように勧めている。これも実際の楽曲の使用例から得た結論じゃ。そして、そう学んだ人は4指の感覚がすぐに発達するという結論も出ている。指導に携わっている方にご一考いただければ幸いじゃな。

19.左小指を鍛えよう(2)
 前項では小指を入門期から使うべし、という話じゃったが、ここでは小指の訓練法をご紹介しよう。まず前ページの第3項〔指のストレッチ〕はどうじゃろう。とりあえず基本となるのは「指の柔らかさ」じゃ。まだまだという人は、ぜひがんばってほしい。さて、次の写真を見てごらん。

A.小指を関節根本から反らす B.内側から見た場合

A、Bいずれも小指を関節の根本から反らしている写真じゃが、薬指はまっすぐに伸びている。従って小指と薬指の指頭が広がり、距離がでることが大切じゃ。最初は薬指が動かないように右手で止めて練習してもよいが、最後的には手を開いた状態から上の写真のようにさっと小指を反らせられればしめたものじゃ。個人差はあるが、だれでも訓練を続けるうちに可能になる。ぜひやってくれたまえ!

20.ギターの音階表
 ギターと音符の関係をしっかり把握しよう。音階では「ミ・ファ」と「シ・ド」は半音じゃ。従ってフレットは隣接する。それ以外の隣の音は1フレット開くのじゃが、この音程は“全音”という。

この表は音符の色とギターのポジションの色が対応しているので使いやすい表だと思う。WINDOWSだとマウスポインタを画像におき、右クリックして「名前を付けて画像を保存」を選んで適当な場所へ保存し、必要に応じて印刷しておけば音符も読みやすいはずじゃ。しかし、いずれはギターと音符の関係を全部覚えるんじゃよ!

11.右手の記号 12.アポヤンドとアルアイレ 13.ギター譜の特徴 14.リピート記号 15.指の訓練3
16.音符の不思議2 17.アルペジオ(1) 18.左小指(1) 19.左小指(2) 20.音階表

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